東京高等裁判所 昭和44年(ネ)225号 判決
ところで一般に一棟二戸建の建物の各戸をそれぞれ賃貸借の目的とした場合、滅失、朽廃等の賃貸借消滅事由は各賃貸借部分について見るのが原則であるが、賃貸借の目的となっている各戸が一棟の建物全体としては不可分であって相互に独立して存在を全うすることが不可能な関係にあると見られる場合は、一方の滅失、朽廃は当然他方の存立に影響を及ぼすから滅失、朽廃の有無に関しては当該賃貸借部分についてのみではなく、一棟の建物全体について判断するのが相当である。これを本件について見るに、前認定したところによると坂本賃借部分と被控訴人大橋賃借部分は相互に右に示したような関係に立つものと認められるところ、坂本賃借部分は火災によって完全に滅失し、被控訴人大橋賃借部分も火災による焼失と自然の腐蝕によって少なくとも三分の一程度は建物としての効用を害されたと認められるから建物全体として見れば約六七・八四パーセント(坂本賃借部分二〇・一二五坪、被控訴人大橋賃借部分一八・七五坪の三分の一、六・二五坪との合計二六・三七五坪の、建物総坪数三八・八七五坪に対する割合。)が建物としての効用を失ったことになり、保険会社の鑑定(前掲甲第一五号証の七)によっても老朽建物のため残存部分を基礎とする御神楽式改修工事は技術的に不可能と認められるから杉浦所有の前記三八・八七五坪の建物は滅失と朽廃により建物としての効用を失い、それに伴って被控訴人大橋の前記一八・七五坪に対する賃借権も消滅に帰したものと解すべきである。
(綿引 福間 宍戸)